
妙覚寺は、京都市上京区に位置する日蓮宗の寺院で、山号を「具足山(ぐそくざん)」と称する。別名「北竜華(きたりゅうげ)」とも呼ばれ、日蓮の孫弟子・日像(龍華樹院)によって開かれた。妙顕寺、立本寺とともに「京都の三具足山(龍華の三具足山)」に数えられる名刹である。
本尊には十界大曼荼羅(法華題目)を祀り、日蓮宗不受不施派の中心寺院として知られる。また、日蓮宗京都十六本山の一つに数えられ、宗派内外からの信仰を集めている。
歴史
- 1378年 – 日実により創建。発願は信徒・小野妙覚尼で、四条大宮の邸内に建立。
- 15世紀初頭 – 日成が門流統一のための9カ条の宗制を制定。不受不施の姿勢が強化される。
- 1466年 – 「寛正の盟約」において宗派内調和の中心となる。
- 1483年 – 足利義尚の命により、中京区妙覚寺町へ移転。
- 1536年 – 天文法華の乱により焼失。一時堺に避難。
- 1548年 – 旧地に伽藍を再建。
- 1572年 – 織田信長が上洛の際、当寺に滞在。翌年、足利義昭と対立し、室町幕府が終焉。
- 1582年 – 本能寺の変の直前、織田信忠が当寺に宿泊。明智軍の襲撃で一部が焼失。
- 1590年代 – 豊臣秀吉の都市整備により、現在の地に移転。
- 1592年 – 日奥が住持となり、不受不施の教義を明確化。
- 後年 – 宗派の方針が一部緩和され、受施派へ転換。
- 1615年 – 大坂城落城後、武将の子らが当寺で自刃したとされる。
- 18世紀中頃 – 直末・孫末を合わせて150を超える末寺を持つ。
- 1788年 – 天明の大火により焼失。その後再建される。
境内
- 表門(大門)
元は豊臣秀吉が築いた聚楽第の裏門で、1590年に建造され、1663年に妙覚寺へ移築された。
両側に小門を備えた薬医門形式で、梁上の空間は防衛のための工夫とされている。 - 本堂
1788年の天明の大火後に再建され、日蓮宗の教えを体現する場として機能している。堂内では法華経の教えが説かれている。 - 祖師堂
日蓮聖人を祀る堂で、1788年の再建以降、信仰の中心となっている。堂内には日蓮聖人の坐像が安置されている。 - 華芳堂(華芳塔堂)
安土桃山時代に建立され、妙覚寺で最も古い建物とされる。日蓮聖人が比叡山で修行中に書写した法華経を納めたと伝えられている。 - 庭園
妙覚寺には趣の異なる3つの庭園がある。
「松の庭」では風情ある景観が広がり、「法姿園」は自然の美しさを感じさせ、「円窓の庭」は仏像が佇む静寂な空間となっている。
文化財
仏像
- 本堂の仏像:
– 「釈迦如来像」および「多宝仏像」が安置されている。 - 祖師堂の仏像:
– 「日蓮上人坐像」、「日朗上人坐像」、「日像上人坐像」が安置。
– 日蓮像は「村鏡自刻宗祖像」と呼ばれ、厄除けの霊像として信仰されている。 - 木造日蓮坐像(重文):
– 院興作の「日蓮坐像」は、重文に指定されている。
建築
- 大門(表門):
– 1590年に建立された豊臣秀吉の聚楽第裏門を、1663年に移築。
– 両潜扉、切妻造、薬医門、本瓦葺きの特徴を持つ。 - 本堂:
– 1788年の天明の大火後に再建された。 - 祖師堂:
– 日蓮聖人を祀るため、1788年の再建後も信仰の中心となっている。 - 華芳塔堂(掛堂、華芳堂):
– 安土桃山時代に建立された山内最古の建物。日蓮が法華経を納めた場所とされている。
文化財
- 日蓮真筆「盂蘭盆御書」:
– 鎌倉時代に書かれた6幅の重文。 - 斎藤道三公遺言状:
– 1556年に斎藤道三が自らの死を覚悟し、子の日饒に送った遺言状。 - 狩野元信筆「大涅槃図」:
– 画家狩野元信による涅槃図。 - 狩野光信・岸駒筆「日蓮聖人画像」:
– 日蓮聖人の肖像画。 - 木造多宝塔(華芳宝塔):
– 京都府指定有形文化財。内部には「石塔」が納められている。
庭園
- 法姿園:
– 本堂前に広がる自然庭園。
– 唐門・伽藍を借景にし、苔地に楓を植えている。
– 「諸法実相」を象徴し、夏は青葉、秋は紅葉が美しい。
墓所
- 日蓮の墓:比叡山西谷の定光院から移されたと伝えられ、三菩薩卒塔婆とともに安置されている。
- 日朗・日兆の墓:近代の1931年に建立された。
- 日像・日典・日奥の墓
- 狩野一族の墓:室町時代から江戸時代にかけて活躍した画家たちの墓が並ぶ。
- 狩野元信(1476–1559)
- 狩野永徳(1543–1590)
- 狩野重信(1543–1590)
- 狩野孝信(1571–1618)
- 狩野高信(1742–1794)
- 狩野永賢泰信(1767–1798)
- 狩野永悳立信(1814–1891)
- 楠正虎の墓:室町時代の文筆家で、楠木正成の子孫とされる。
- 茶わん屋楽屋の墓:楽焼の始まりに関与したとされ、聚楽焼の起源に関わる人物。
- 久保田家一族の墓:茶人として知られる久保田家の一族が眠る。


